なれ鮨への想い-グルメるCD級-まぐろぐ  

なれ鮨への想い-グルメるCD級

本ブログでは、
なれ鮨に慣れ親しんだ北の漁師の、
グルメ観を述べます。

なれずし(熟寿司、馴れ寿司)は、
主に川魚を塩と米飯で発酵させた保存食品である。
寿司の原型とも呼ばれる事があるほど
古い歴史がある料理方法で、
現在でも各地でつくられ食べられている。
現在主流となっている
にぎり寿司を中心とした早ずし(江戸前寿司)とは
全く違う寿司である。

引用 「なれずし」 Wiki

☆ 紀州の新宮(和歌山県東海岸)のなれ鮨
 北の漁師は馴れ鮨が大好きである。
 折箱から蓋をあけてとりだせば、
 家の者が顔をしかめるほどの悪臭がひろがる。

 なめればピリッと乳酸菌の刺激をうける喜び、
 これにひたれるのであれば臭いは、
 食欲の呼び水となること請け合いだ。 

 ○魚をならべて、
  その上に飯をのせて潮水をかける。
  さらに魚と飯をかさね塩水をかける。
  それを数回か繰りかえす。

  そして木枠にいれ上下から〆木にかける。
  これを数日おけばできあがり。
  このときに出た汁は下に落ちるようにしておく。
  簀の子などを使う。
  
 ○コツとしてのグルメ観
  脂分の旨味が流れるが、
  この余計な水分を鮨から離さないと、
  生臭くて箸がでない。
  
  ※簀の子を使うのは、
   雑菌の発生を抑制し腐食を防ぐことになる。
   一番大事なことです。
  
   塩を能く使う-肝腎かなめ
   塩で余計な脂身をすてる。
   "嫌気菌は発酵と腐敗は紙一重"

☆ 三年ものと三十年もののはなし-新宮
 ○三年漬けの鮎
  大きな鮎が姿のままこまかく塩を吹き、
  "塩づかい"が上手いのに感心する。

  その味わいは鮨好きにはこたえられない
  陶然とする思いである。

 ○三十年ものの鮨
  鮒ずし以外にもあるのか、
  四斗樽がいくつか並んでいる倉庫で、
  蓋をとってみると中には魚と飯が溶けあい、
  ペースト状になった三十年ものの鮨が、
  よだれの出てくるような芳香を出していた。


☆ 鮎のなれ鮨-ききがたり 

※ 引用 『海の熊野-熊野川河口の風景」
     宇江敏勝氏の論文から


○ 次いで北の漁師の一言。

★ 下窪ミスエさんのききがたり




  紀州でも『なれ鮨』は正月料理のご馳走だ。
 ・昔、十津川から伝わったといわれている。
  十津川の筏師が新宮で増水が引くのを待つ間、
  食料としてもってきたと聞いている。

 ・なれ鮨の看板をあげたのは、戦後まもなくであった。
  モーター(プロペラ舟)のあったころは、
鮨を持って川原の桟橋まで売りに行ったりもした。

 ・正月前になると、
  頼まれて個人の家まで漬けに行くこともあった。

 ◎鮨の鮎は大きいほど良い。
  ・まずハラ(臓物)をぬき、二枚におろして塩漬けにする。
  ・二、三週間たってとりあげ、漬ける前に骨をとり、
   一日ぐらい水で塩ぬきをする。

 ◎ご飯はふつうの米を少し多めの水で炊く。
  ・其めしを細長くにぎり、鮎の姿で包み込む。
  ・『姿鮨』を桶の中に重ねて並べ、しまいにウラジロ(洋歯)の
   葉をかぶせ、ふたをして重石でおさえる。

 ◎二、三週間すると、鮨が発酵して桶のふたの上に水が出てくる。

 ◎鮨は十日間ぐらいは保存できる。

 ◎冬のはじめから春の四月ごろまでこしらえた。

★ 昔の鮎は大きゅうてよかった
  いま熊野川の鮎は小さくてまともな鮨は作れない。
  ダムができて、鮎はあかんようになった。
  このあたりの鮎はまるっきり獲れんようになって、市場もなくなった。
  このごろではほかの川に買いに行っている。
  去年は古座川から十五万円ほど買うた。

※ 昭和五十八年(1983)四月十日、
  相筋のご自宅で話をうかがった。
  自分でとってきたと、イタドリ、ワラビ、ゼンマイなどを庭で
  桶に入れて売っている。鮎の干物もあった。

※ 下窪ミスエさん
  明治四十三年(1910)十月二十一日、請川村(現田辺市)うまれ。
  二十歳で同じ請川の人と結婚し、相筋で世帯を持つ。
  当時の相筋はバラックのようなそまつないえがおおく、
  杉皮葺きの屋根に石を載せていた。
  しかし人情は篤くて、暮らしやすかった。

  主人は山林の伐り出しをし、筏にも乗ったが、
  身体が丈夫でなかったので
  苦労した。二十五年前(昭和三十五年)に亡くなった。
  子供は九人生まれて六人が育った。


○ 北の漁師からの一言
・鮎のなれ鮨はいうまでもなく『発酵食品』である。
 ・日本人が文字通り慣れ親しんだ誇れる「伝統食品」です。
 ・私たちは多くの発酵食品を毎日の食卓で、意識せずにあたりまえのこと
  として摂り続けています。

  この稿では漁食民族たる私たちの独特のあじみのする魚の旨さを
  取り上げて紹介します。

1.川魚のなれ鮨
鮎鮨
 - 鮎は香魚とも呼ばれ特有の香味が一段と好ましい
ぜいたく感あふれる食べてうれしい高級魚です。

 - 前段の昔語りは、熊野川で資源豊富な時代の話ですが、今では
  通にはのどがなる古きよき時代のこととして望むべくもないが、
  お付き合い願います。

  現に近頃では美味しい鮎に当たることはまれでして、私も一度しか
  食べたことがありません。ましてや鮎においておや。

 - 脂が少ないので、物足りない面がありますがそれはそれとして、
  "くさっても鯛"といういいまわしがあるとおり、味わってよかった
  と思えるほどの食味があります。

 - 脂が少ないことは鮨に作りやすいことにつながりますが、脂身は
  旨さを左右しますので、塩のあんばい、酢のつかい、重石のしかた、
  桶の材質(杉・桧-風のプラスチックは通気性がないのでいけません)、
  作るときの季節と地域の気象などがあり、鮮度と衛生にも気を使って
  そりゃー大わらわです。

 - 鮮度と塩のあんばいは鉄則。
  いきのおちた魚は危険です-ボツリヌス菌の発生-嫌気性の微生物。
  非常に毒性が強くくわばらくわばら。
  桧の桶は、通気の特性とともになんらかの抑制する有効成分があります
  から、プラは使ってはいけません。

  ◎「塩のあんばい」について
   しょっぱく漬けるのは誰でもつける、かといって甘いとなまぐさい。
   しょっぱいところとなまぐささの境目が肝腎

   ここがうまくいかないときには、醤油をさして食す。

 - さて漬けあがって最初に箸をつけるとき、腐敗のにおいがしなければ
  いいのですが、そんなときには思い切って棄てる。
  なんか美味しそうなにおいがしたらトライする。

 - 私らのところでは九枚笹(熊笹)を敷きますが、殺菌効果がありますので
  これを忘れないように。
  また、一番下には『すのこ』をセットしてしみでた水気を棄てやすい
  ように吟味するのも大事です。こうすることで出来上がりを
  なまぐさみなくし食せる。

 - 見栄えを良くするため、私たちはにんじんと大根のせん切りを
  鮎と交互に重ねて漬ける。

 鮒鮨
 - 近江(江州・ごうしゅう-滋賀県)琵琶湖で有名なのは、
  なんといっても鮒の鮨。かなり長期間食せる-夏を越してゆうに一年は
  食す習慣が営まれている。

  北の漁師は経験がないので論評は差し控えます。死ぬ前に一度でいいか
  ら味わいたいと念願してまいす。



 - ニゴロブナ(煮頃・似五郎)鮒
  主として湖南地方に生息。4〜5月頃産卵のため浅瀬に寄せる。
  産卵前の未熟卵を抱卵したニゴロブナを漬ける。
  このことで春前の寒い時期に漬けることになる。
  ゲンゴロウブナに似ているが眼が大きく体高が低い。
 
2.海魚のなれ鮨
 - いろいろ漬けましたが、
  脂分が強いので「生だし(きだし)」-脂分とともに
  血を抜くこと-を充分に行う。
  塩漬けの段階で二回はさかさまにひっくり返してやりかえること。
  塩の「浸透圧」で旨みをにがさずに。

 - サケマス類
  ベニ鮭は身が紅いから見事なできばえとなる。
 - かれい類
  私たちは四十五日は漬ける。

  一般に底魚類は骨が硬いが、このぐらい漬ける。
  あの硬い骨が口の中で全く気にならない。
  "骨から出る旨み成分"が身ととも
  にのどをすうっーとかわってあっという間に腹の中。

  北の漁師は「宗八かれい」が一番美味かった。脂があるんですよ。

 - サンマ、ニシン



  脂分が変質してしぶくならないうちに。

 - ハタハタ
  いわずとしれた秋田名物「八森ハダハダ大館曲げわっぱ〜」、
  唄の文句じゃないが鮨といえばまずこれこの魚。
  なじみのない人たちも聞いたこともあるでしょう。
  くせがなくて食べやすい。
  ハタハタ鮨から派生した「きりたんぽのしょっつる鍋」。
  かるくて、
  健康的な食味感は今年の新米とあいまってしたつづみ。

3.これから挑戦したい魚
 - カンカイ(こまい)
白身の魚で道東の「汽水湖」に、流氷の声をきく頃よせてくる。
  タラの仲間のうちでは一番味がよい。
  刺身にしてよし焼いてよし、
  味噌仕立、塩仕立ての魚汁、どうやって食っても美味い魚。
  そのなかでも軒につるした「寒干し」は絶品だ。
 - シシャモ
  襟裳(岬)を境に、
  西は日高の静内から東は広尾・釧路までの特定の沿岸域。
  サンマ時の奥山が白くなる頃解禁、今では高級品。
  この魚は時期海区が決まっているので
  値が張り簡単には手にはいらず
  幻になるかも。

 - 幻のグルメCD級
  「鰹のガワ」
  カツオ船商売でなきゃ食えない、
  臭い-においがきつい-箸をつけるのも
  気がひけるくさやの様なはた迷惑な発酵なれ鮨。

  陸上の人たちは、
  まあ食わなくてもどうということもないんですが。
  そういうものがあります。

  そういえば焼津の加工屋がネットで売ってましたな。
  船で作るのとは全く違う製品のようです。

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H24 2012-08-07 1520